伝説のレコーディング・エンジニア

ルディ・ヴァン・ゲルダー(Rudy Van Gelder, 1924年11月2日 – 2016年8月25日)は、ジャズの分野の録音を中心に活躍していたレコーディング・エンジニアである。本名はルドルフ・ヴァン・ゲルダー(Rudolph Van Gelder)。

ヴァン・ゲルダーは一般に音楽史上で最も重要なレコーディングエンジニアの一人と考えられており、古典的名盤といわれるものも含め、数百のセッションを録音したジャス史の影の伝説的人物である。

当初、検眼技師として働きながらレコーディング・エンジニアとしての活動をスタートしたルディ。当時は、ニュージャージー州ハッケンサックにある自宅のリビングルームをレコーディング・スタジオとして使用していたが、1959年にはイングルウッドクリフスにスタジオを建設。以降はここを主戦場とし、実に多くの作品の録音を行った。手掛けたレーベルは、ブルーノートの他、「インパルス」、「プレスティッジ」、「リヴァー・サイド」、そして「CTI」と多岐にわたる他、日本のアニメ「Cowboy Bebop」のサントラのレコーディングを手掛けた経歴がある。

彼はジャズのレコーディングに今までになかったような明晰さを持ち込み、トランペッターのマイルス・デイヴィス、ピアニストのセロニアス・モンク、サックス奏者のウェイン・ショーターやジョン・コルトレーンといったジャズ界の偉人の作品を多く録音した。ゲルダーは多くのレコード会社と仕事をしたが、特にブルーノートと深い関係を持っていた。

ヴァン・ゲルダーの録音手法は、多くの場合、温かさと存在感のある音の仕上げを賛美されているが、この評価は全面的に共有されているわけではない。特に評論家は、ピアノの音が細く隠れがちなものになってしまうことに不満を表明している。評論家のリチャード・コックは、ヴァン・ゲルダーのピアノの録音手法は、しばしばピアニストの演奏と同じくらい独特のものであると書いている。

尚、彼はジャズだけでなく、1950年代から米VOX等のクラシックの録音も手がけていたが、このことは一般的には余り知られていない。

2016年8月25日、イングルウッドクリフスの自宅で91歳の生涯を閉じた。