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電気と電子の流れ

真空管の動作原理を理解する為に、まずはじめに乾電池と電球を使った簡単な基本回路から見てみましょう。

電気はプラスからマイナスに流れると勉強しましたが、流れた電気(の量)を「電流」、電池が電気を流そうとする力を「電圧」と呼びます。電流は電池のプラスから流れてひと回りしてマイナスに戻ってきます。

金属のように、電気を通せる物体を「導体」、プラスチックやガラスやゴムのように電気を通さない物質を「絶縁体」といいます。

電気の正体は電子という粒子で、この電子は負電荷を帯びています。(電子の電荷が負に定義されているのは、人類が電子を発見する前に電荷の正負の定義が行われ、あとから電子が見つかった際に電子の電荷を調べたら負電荷だったことに由来しています。)

自由電子

金属中での自由電子の模式図

金属中の電子のように、物質中を有に動ける状態の電子を「自由電子」と言います。

電流とは、自由電子が移動することです。

電池のように電極の+と-が定まった 電流を「直流電流」と呼びます。 一方、発電所から得られる電流のように +と-が速い速度で入れ換わる 電流を「交流電流」と呼ばれています。

交流を直流に変換することを「整流」と言います。交流は電圧のプラスとマイナスが波のように高速で入れ替わる電気の流れですが、交流を直流に変えるということは、この波をなくし、なるべく向きが変化しない電気にするということです。

2極(ダイ・オード)真空管

電気回路の整流には今でこそ半導体ダイオードを使っていますが、1960年ごろまでの整流回路には真空管使っていました。

二極真空管(二極管)はガラス管の中に、フィラメント(電気抵抗の比較的大きい電線で、両端を外部に引き出してある)と、フィラメントに向き合う板状の電極(アノード、形状からプレートと呼ぶ)を封入した形をしています。

2極管

真空中でフィラメント電極(陰極、カソード)に電流を流すと加熱され、熱電子が放出されます。このとき、フィラメントを基準にしてプレート(陽極、アノード)側に正電圧を与えると、放出された熱電子は正電荷に引かれ陽極に向かって飛びます。この結果フィラメントからプレートに向けて電子の流れが生じる。すなわち、プレートからフィラメントに向かって電流が流れることになる。また、プレートに負電圧を与えると熱電子は負電荷に反発してプレートには達しない。従って、二極管はプレートからフィラメントに向かう電流のみ通すことになり、整流効果が得られる。

電子の電荷(でんか)は、マイナスの符号であることに注意してください。電子がマイナスなので、電流の向き電子の動く向きとは反対になります。なので真空管での電流の向きは、陽極から陰極への向きです。

この陰極からしか電子が出ないという仕組みを使うと、電流を一方向のみに流す整流(せいりゅう)ができます。 整流によって、陽極から陰極へ電流が流れます。(電子は陰極から放出され陽極に到達する。)

3極(トライ・オード)真空管

この真空管に、さらに、もう一本、マイナス極の近くに、金属の網状の「グリッド」という電極を取り付けます。

3極管3つ目の電極であるグリッド電極の電圧の大きさを変えると、陰極から放電される電子の量が変わります。3つ目の電極の電圧をかえるのに流した電流の大きさ以上に、陰極からの電流の大きさを変えることができます。これによって、3極真空管には、少ない電流の変化を、大きな変化に変える 増幅(ぞうふく)が可能になります。(増幅といっても、べつに無から有の電流を作るわけでは無く、外部電源は必要になる。)

グリッドが1個の真空管を3極管、2個以上のものを多極管という。

多極管

多極管の場合、グリッドはカソードに近い方から順に第1、第2、第3と呼ぶ。一般的に第1グリッド(コントロール・グリッド)にはマイナスの直流電流(バイアスという)を加えておき、第2グリッド(スクリーン・グリッド)には高いプラスの直流電圧を与える。5極間の場合、第3グリッド(サプレッサー・グリッド)は特に断らない限りカソードと同電位に管内で接続されていることが多い。

多極管の3極管接続

多極管は、第2グリッドをプレートに接続することで3極管の特性を得る動作方式

ビーム出力管

5極管の第3グリッドの代わりにビーム形成電極(通常は管内でカソードに接続)をもち、電子をビーム状に絞った高性能管で4極管の一種といえるが、特性上は5極管と同一に扱ってよい。